国民健康保険料に「子ども・子育て支援金分」が新設——2026年度から上限113万円に【フリーランス向け】
社会保険・年金
フリーランスになって最初に驚く固定費が、国民健康保険料です。会社員のときは労使折半だった保険料が全額自己負担になり、しかも前年の所得で決まるため、稼いだ翌年に請求がやってきます。
その国民健康保険料に、2026年(令和8年)4月から4つ目の区分「子ども・子育て支援金分」が加わりました。これにより世帯あたりの年間上限(賦課限度額)は、前年度の109万円から合計113万円へ引き上げられています。
6月以降に届いた保険料通知書を見て「区分が増えている」と気づいた人もいるはずです。この記事では、何がどれだけ変わったのか、上限はどう判定されるのか、そして負担が重いときに現実的に取れる手を整理します。
注意: 本記事は2026年8月時点で確認できた厚生労働省・市区町村の公表情報にもとづく整理です。国民健康保険料(税)の料率・均等割額・軽減判定・区分の呼称は市区町村ごとに異なり、上限に達する所得水準も自治体によって変わります。実際の金額は、お住まいの市区町村の国保窓口または保険料(税)の通知書でご確認ください。
2026年度の改定——4区分・合計113万円へ
新設された「子ども・子育て支援金分」
子ども・子育て支援金は、児童手当の拡充や妊婦向けの給付などの財源として、医療保険料とあわせて集める仕組みです。国民健康保険では、令和8年4月分から国民健康保険料に合算して納付する形になりました。
多くの自治体が公表している令和8年度の賦課限度額は、次のとおりです。
| 区分 | 2026年度(令和8年度)の限度額 |
|---|---|
| 医療分(基礎賦課分) | 67万円 |
| 後期高齢者支援金分 | 26万円 |
| 介護納付金分 | 17万円 |
| 子ども・子育て支援金分(新設) | 3万円 |
| 合計 | 113万円 |
変わったのは2か所です。医療分が66万円→67万円に引き上げられたことと、子ども・子育て支援金分(上限3万円)が新設されたこと。合計では前年度の109万円から4万円増えた計算になります。
「113万円」は世帯の合計であって、1人あたりではない
押さえておきたいのが、国民健康保険料は世帯単位で計算されるという点です。世帯主が納付義務者となり、世帯に属する加入者全員分をまとめて賦課されます。
夫婦ともにフリーランスで同一世帯なら、2人分の所得を合わせて1つの世帯の保険料が決まり、上限も世帯で判定されます。「1人あたり113万円」ではありません。
上限は区分ごとに別々に判定される
ここが誤解されやすいところです。113万円という数字は各区分の限度額を足し合わせたもので、判定は区分ごとに行われます。
各区分の保険料は、おおまかに次の要素の合計です。
- 所得割 … 加入者の所得に料率をかけたもの
- 均等割 … 加入者1人あたりの定額
- 平等割 … 1世帯あたりの定額(採用していない自治体もあります)
この合計が区分ごとの限度額を超えると、その区分だけが頭打ちになります。医療分が67万円で止まっていても、後期高齢者支援金分がまだ26万円に届いていなければ、そちらは所得に応じて増え続けます。
上限に達する所得水準は、自治体によって違う
「いくら稼いだら上限か」は一律には言えません。所得割率も均等割額も市区町村が条例で定めているためです。
考え方だけを示すと、医療分の限度額に達する所得は次のように逆算できます。
(67万円 − 医療分の均等割・平等割の合計)÷ 医療分の所得割率
仮に、医療分の所得割率が7.0%、均等割・平等割の合計が5万円の自治体だとすると、(67万円 − 5万円) ÷ 7.0% = おおよそ886万円の「旧ただし書き所得」で医療分が上限に達する、という計算になります。あくまで仮定を置いた試算なので、実際の料率はお住まいの自治体の数字に置き換えてください。
なお国民健康保険の所得割の算定基礎は「旧ただし書き所得」=総所得金額等から住民税の基礎控除額を差し引いた額です。控除額は税制改正の影響を受けるため、最新の金額は自治体の案内で確認してください。
介護納付金分がかからない世帯もある
介護納付金分(17万円)が賦課されるのは、40歳以上65歳未満の加入者がいる世帯だけです。世帯に該当者がいなければ、その世帯にとっての実質的な上限はそのぶん低くなります。
一方、子ども・子育て支援金分は年齢を問わず加入者に賦課される設計です。ただし子どもの均等割については軽減措置が設けられており、扱いは自治体の案内で確認してください。
負担が重いときに取れる4つの手
上限に届く・届かないにかかわらず、国民健康保険料はフリーランスの固定費の中でも大きい部類です。現実的な選択肢は次の4つに整理できます。
1. 課税所得そのものを下げる
国民健康保険料は所得に連動するため、所得控除ではなく「所得」を下げる打ち手が効きます。
- 青色申告特別控除 … 所得金額から差し引かれるため、国保料の算定基礎である旧ただし書き所得も下がります。要件と手続きは「開業届と青色申告承認申請をe-Taxで出す手順」を参照してください
- 経費の計上漏れをなくす … 家事按分を含め、事業に必要な支出を正しく計上する。判断基準は「フリーランスの経費、どこまで認められる?」にまとめています
一方で、iDeCoの掛金や小規模企業共済の掛金は「所得控除」であり、国民健康保険料の算定基礎である旧ただし書き所得は下がりません(所得税・住民税は下がります)。節税と国保料対策では効き方が違う、という点は押さえておいてください。詳しくは「小規模企業共済はフリーランスに向くか」「フリーランスの年金とiDeCo」で整理しています。
2. 国保組合への加入を検討する
業種によっては、市区町村の国民健康保険ではなく国民健康保険組合に加入できる場合があります。組合によっては保険料が所得にかかわらず定額で設定されているため、所得が大きい人ほど有利になり得ます。
ただし、加入できる業種・団体への所属要件・保険料の水準は組合ごとにまったく異なり、募集状況も変わります。該当しそうな組合があれば、条件と保険料を直接確認してください。
3. 法人化して社会保険に切り替える
法人を設立して役員報酬を受け取る形にすると、健康保険・厚生年金(社会保険)の加入対象になります。保険料は報酬額で決まるため、高所得のフリーランスでは国保より有利になるケースがあります。
一方で、法人の維持コスト・社会保険料の会社負担分・事務負担が発生します。判断の軸は「フリーランスが法人化するタイミング」で整理しています。
4. 独立直後なら「任意継続」との比較を忘れない
会社を辞めた直後の1〜2年は、前職の健康保険を任意継続したほうが安く済むことがあります。国保料は前年所得で決まるため、会社員時代の高い所得がそのまま国保料に反映される独立初年度こそ差が出やすい局面です。
比較の手順は「国民健康保険と任意継続、どっちがお得か」にまとめています。加入先の全体像は「フリーランスの社会保険——会社員と何が変わる?」もあわせてどうぞ。
まとめ:3つのポイント
- 2026年4月から国民健康保険料は4区分になった … 医療分67万円+後期高齢者支援金分26万円+介護納付金分17万円+新設の子ども・子育て支援金分3万円で、上限は合計113万円(前年度109万円から+4万円)
- 上限は区分ごとに別々に判定される … 医療分が頭打ちでも他の区分は所得に応じて増える。介護納付金分は40歳以上65歳未満の加入者がいる世帯のみ
- 効く打ち手は「所得を下げる」か「制度を替える」 … iDeCo・小規模企業共済の掛金は所得控除なので国保料には効かない。国保組合・法人化・任意継続との比較が現実的な選択肢
社会保険は、フリーランスになった瞬間に「自分で選んで、自分で管理するもの」に変わります。国保・年金・労災の全体像を一度体系的に押さえておくと、こうした改定のたびに慌てずに済みます。基礎の確認には無料のフリーランス検定(ベーシック・30問)が使えます。税務・社会保険・契約を含む全体像は、電子書籍『フリーランスの教科書』で全110章にまとめています。
参考リンク
- こども家庭庁・子ども・子育て支援金制度について: https://www.cfa.go.jp/policies/kodomokosodateshienkinseido
- 厚生労働省・国民健康保険制度: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html
- 世田谷区・令和8年度より国民健康保険料に子ども・子育て支援金分が加算されます: https://www.city.setagaya.lg.jp/02060/32027.html
- 水戸市・国民健康保険税の計算方法(令和8年度): https://www.city.mito.lg.jp/site/kokuho/3055.html
- 国税庁・青色申告特別控除: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
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