フリーランスの社会保険——会社員と何が変わる?国保・年金・労災の全体像【2026年】

社会保険・年金

会社を辞めてフリーランスになると、給与から自動で天引きされていた社会保険料を、今度は自分で管理して納めることになります。「社会保険料が高くなった」と感じる人が多いのは、単に金額の問題ではなく、会社が半分肩代わりしてくれていた仕組みごと外れるからです。

しかも「社会保険」という言葉は文脈によって指す範囲が変わるため、何にどう入り直せばいいのか分かりにくいのも事実です。

この記事では、フリーランス(個人事業主)が関わる社会保険を、会社員時代との違いという視点で整理します。健康保険・年金・労災・雇用保険の4点を押さえれば、独立後に何を自分で用意すべきかが見えてきます。


「社会保険」には広い意味と狭い意味がある

まず、言葉の整理から始めましょう。日本語の「社会保険」は2つの意味で使われています。

広義の社会保険(5つの公的保険)

国が運営する「万が一」に備える制度の総称で、次の5つを指します。

保険 対象 備える対象
健康保険・国民健康保険 全員 病気・けが
介護保険 40歳以上 介護
厚生年金・国民年金 全員 老後・障害・遺族
労災保険 雇用されている人・一部の特別加入者 仕事中のけが・病気
雇用保険 雇用されている人 失業・育休・介護休業

日本は国民全員が何らかの健康保険に加入する「国民皆保険」、20〜60歳の全員が年金に加入する「国民皆年金」を採用しています。つまりフリーランスも、公的な医療保険・年金からは外れません。入る先が変わるだけです。

狭義の社会保険(会社員が言う「社保」)

会社員が「社会保険に入っている」と言うときは、通常健康保険・厚生年金・介護保険の3つを指します。給与から天引きされ、保険料の半額を会社が負担してくれる制度です。

フリーランスになると、この「会社が半額負担してくれる」部分がなくなります。これが独立後に社会保険料を重く感じる最大の理由です。


会社員(被用者保険)とフリーランス(国民保険)の違い

社会保険は、加入者が「雇われているかどうか」で2つのグループに分かれます。

対象 加入する主な保険
被用者保険 会社などに雇用されている人 健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険
国民保険 雇用されていない人・個人事業主 国民健康保険・国民年金

独立すると、被用者保険のグループから国民保険のグループへ移ります。ポイントは3つです。

  1. 健康保険 → 国民健康保険(または任意継続・扶養)に切り替わる
  2. 厚生年金 → 国民年金のみになる(年金の「2階部分」が空く)
  3. 雇用保険は対象外になる(失業給付がなくなる)
  4. 労災保険は原則対象外だが、2024年11月から任意の特別加入が可能になった

健康保険を含む社会保険全体の仕組みは、無料のフリーランス検定(ベーシック・30問)でも出題範囲に含まれています。基礎の確認に活用してください。


① 健康保険:国保・任意継続・扶養の3択

独立後の健康保険には、大きく3つの選択肢があります。

  • 国民健康保険:市区町村が運営。前年の所得に応じて保険料が決まる
  • 任意継続:退職前の健康保険を最長2年間続ける制度
  • 家族の扶養に入る:収入が一定以下なら家族の被扶養者になる

どれが得かは、前年所得・扶養家族の有無・住んでいる自治体で変わります。特に独立1年目は前年に会社員の給与があるため国保料が高く出やすく、任意継続のほうが安く済むケースもあります。国保と任意継続のどちらを選ぶべきかは「国民健康保険と任意継続、どっちがお得?」で具体的に比較しています。

なお国民健康保険料は前年所得ベースで計算され、会社の折半がありません。所得300万円・単身の場合の年間目安は、東京都23区で約35万円、大阪市で約42万円と、自治体によって±30%程度の幅があります。必ず自分の地域の保険料を試算しておきましょう。

40歳になると上がる「介護保険」

40歳以上65歳未満のフリーランスには、介護保険料が国民健康保険料に上乗せされて課されます。「40歳になった途端に保険料が上がった」と感じるのはこのためです。所得300万円なら年7〜10万円程度が上乗せされる目安です。


② 年金:厚生年金がなくなり「2階部分」が空く

会社員の年金は、1階の国民年金(基礎年金)+2階の厚生年金という2階建てです。フリーランスになると2階の厚生年金がなくなり、国民年金だけになります。

国民年金保険料は、令和8年度(2026年度)で月17,920円です。所得に関係なく定額で、令和7年度の17,510円から410円上がりました。会社員のように会社が半額負担する仕組みはなく、全額自己負担です。

将来受け取る年金額も、厚生年金がない分だけ会社員より少なくなります。この「2階の空き」を自分で埋める手段として、iDeCo・小規模企業共済・国民年金基金・付加年金などがあります。掛金が全額所得控除になり節税にもなるため、フリーランスにとっては老後資金と節税を兼ねた重要なテーマです。詳しくは「フリーランスの年金とiDeCo」で解説しています。


③ 労災保険:2024年11月から特別加入が可能に

労災保険は本来、雇用されている労働者のための制度で、フリーランスは対象外でした。しかし2024年11月1日から、業種を問わずほぼすべてのフリーランスが労災保険に「特別加入」できるようになりました。ITエンジニア・デザイナー・カメラマンなど、これまで対象外だった職種も含まれます。

  • 仕事中・通勤中のケガ、病気、障害、死亡などを補償
  • 加入は任意。特別加入団体を通じて申し込む
  • 保険料は原則として給付基礎日額の0.3%・全額自己負担

会社員のような労災の自動適用はないため、業務中のケガのリスクが高い人ほど検討する価値があります。制度の詳細や補償内容は「フリーランスの労災保険・特別加入制度」で解説しています。


④ 雇用保険:フリーランスには失業給付がない

会社員が加入する雇用保険は、失業したときの基本手当(失業給付)や、育児休業給付・介護休業給付の財源です。フリーランスはこの雇用保険の対象外で、廃業・休業しても失業給付は受け取れません

だからこそ、収入が途絶えたときの備えは自分で用意する必要があります。小規模企業共済(廃業時に共済金を受け取れる)、就業不能保険、生活防衛資金の確保などが自己防衛の柱になります。

なお、パートや家族の扶養と組み合わせて働く場合は、社会保険の加入ラインの変更も関係します。「106万円の壁、2026年10月に撤廃へ」「130万円の壁はどう変わったか」もあわせて確認してください。


まとめ:独立前に「社会保険の全体像」を把握しておく

フリーランスの社会保険は、会社員時代の「天引きで完結する仕組み」から「自分で選んで納める仕組み」への切り替えです。整理すると次の4点です。

  • 健康保険:国保・任意継続・扶養の3択。1年目は任意継続が得なことも
  • 年金:厚生年金がなくなり国民年金のみ(令和8年度・月17,920円)。2階はiDeCo等で自助
  • 労災:2024年11月から特別加入が可能。任意・全額自己負担
  • 雇用保険:対象外。失業給付がないので廃業リスクは自分で備える

税・社会保険を合わせると所得の40〜50%が出ていくのが独立後の現実です。社会保険から確定申告・契約実務まで体系的に学びたい方は、電子書籍『フリーランスの教科書』もあわせて活用してください。

知識を無料で確認する

この記事のテーマは登録不要の10問体験版無料のベーシック検定(30問)でも出題されています。フリーランス・副業の実務知識を体系的に確認できます。

関連記事