フリーランスの年金は会社員より薄い——iDeCo・国民年金基金・付加年金・小規模企業共済で差を埋める【2026年】

社会保険・年金

「フリーランスは年金が少ない」——なんとなく聞いたことはあっても、実際にいくら差がつくのか、そして何をすれば埋められるのかまで整理できている人は多くありません。

会社員には厚生年金という2階部分がありますが、フリーランス(国民年金第1号被保険者)が受け取れるのは原則老齢基礎年金だけです。この構造上の差を放置すると、老後の受取額に大きな開きが出ます。

一方でフリーランスには、会社員より枠が大きく、掛金がまるごと節税になる私的年金の選択肢があります。この記事では、iDeCo・国民年金基金・付加年金・小規模企業共済の4本柱を、2026年度(令和8年度)の最新数値で使い分けられるように整理します。


フリーランスの年金はなぜ「薄い」のか

日本の公的年金は2階建てです。

  • 1階:国民年金(老齢基礎年金) … 全員共通の土台
  • 2階:厚生年金 … 会社員・公務員などが上乗せで加入

会社員は1階+2階の両方を受け取れますが、フリーランスは原則1階のみ。ここが最大の差です。

老齢基礎年金の満額は、2026年度(令和8年度)で月7万608円・年84万7,300円です(新規裁定者の額。前年度から1.9%の引き上げ)。これがフリーランスの公的年金の土台になります。厚生年金が上乗せされる会社員と比べると、老後の受取額は構造的に少なくなります。

つまりフリーランスの老後設計は、「足りない2階部分を自分で作る」ことが出発点になります。そして国は、そのための私的年金制度に手厚い所得控除という後押しを用意しています。

保険料の免除や国民年金の仕組みそのものについては、退職後の健康保険(国保か任意継続か)の記事でも社会保険の全体像に触れています。


フリーランスが使える「上乗せ年金」4本柱

① iDeCo(個人型確定拠出年金)

自分で掛金を出して運用し、原則60歳以降に受け取る私的年金です。最大の魅力は、掛金が全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除になる点です。

フリーランス(第1号被保険者)の掛金上限は、現行で月6万8,000円(年81万6,000円)。会社員(企業年金なしで月2万3,000円)より大幅に大きく、これは「公的年金が薄いぶん自分で備えてください」という制度設計の裏返しでもあります。

  • メリット:掛金が全額所得控除/運用益も非課税/自己破産時も原則差押えの対象外(老後資金を守れる)
  • デメリット原則60歳まで引き出せない(流動性がない)

収入が不安定なフリーランスは、生活防衛資金を確保したうえで無理のない掛金額に設定するのが現実的です。

【2027年1月からの引き上げ予定】 年金制度改正法にもとづき、第1号被保険者のiDeCo等の掛金上限は月6万8,000円から月7万5,000円へ引き上げられる予定です(施行時期は政令で定められています)。節税枠がさらに広がる見込みですが、最終的な適用時期・手続きは公式発表をご確認ください。

② 国民年金基金

国民年金の1階に上乗せする、フリーランス向けの終身年金制度です。こちらも掛金は全額所得控除(社会保険料控除)の対象になります。

iDeCoが「自分で運用して結果が変わる」のに対し、国民年金基金は加入時に受取額(給付)が確定するのが特徴。運用リスクを取りたくない人、受け取り額を先に見通したい人に向きます。

ここで重要なのが掛金の枠です。フリーランスの場合、iDeCo・国民年金基金・付加保険料を合算した上限が月6万8,000円の共通枠になっています。つまり国民年金基金にたくさん掛けると、そのぶんiDeCoに回せる枠が減ります。「iDeCoか国民年金基金か」は二者択一ではなく、共通枠の中でどう配分するかという発想が正確です。

③ 付加年金

見落とされがちですが、コスパが非常に高いのが付加年金です。国民年金の保険料に月400円を上乗せして納めると、受給時に**「200円×付加保険料の納付月数」**が老齢基礎年金に毎年上乗せされます。

たとえば10年(120か月)納めると、支払総額は400円×120=4万8,000円。受取は毎年200円×120=年2万4,000円が終身で上乗せされるため、受給開始から2年で元が取れる計算になります。

ただし注意点があります。付加年金と国民年金基金は併用できません(どちらか一方を選択)。また、付加保険料を納めるとiDeCoの掛金上限は月6万7,600円に調整されます(前述の共通枠のため)。少額から始められる「まず一手」として検討する価値があります。

④ 小規模企業共済

フリーランス・個人事業主のための、いわば自分で積む退職金制度です(独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営)。

  • 掛金:月1,000円〜7万円(500円単位で設定・変更可)
  • 節税:掛金は全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除・年間最大84万円)
  • 受取時:一括受取は退職所得扱い、分割受取は公的年金等の雑所得扱いで、いずれも税制上の優遇がある

退職金のないフリーランスにとって、老後資金と節税を両立できる中核的な制度です。ただし、任意解約(自己都合の途中解約)では元本割れするおそれがあり、長く続けることが前提です。掛金は途中で増減できるので、収入の波に合わせて調整するとよいでしょう。


使い分けの考え方——優先順位の目安

制度が4つあると迷いますが、性質で整理するとシンプルです。

制度 掛金の所得控除 引き出し・流動性 向いている人
iDeCo 全額控除 原則60歳まで不可 運用も自分でやりたい/老後資金を確実に固めたい
国民年金基金 全額控除 原則不可(終身年金) 受取額を確定させたい/運用リスクを避けたい
付加年金 全額控除 受給時に上乗せ まず少額から・コスパ重視
小規模企業共済 全額控除 廃業・引退時など(任意解約は元本割れ注意) 退職金代わりを作りたい

一般的な考え方としては、次のような順序が目安になります(あくまで一例で、資金の余裕や事業の安定度によって変わります)。

  1. まず付加年金(月400円で確実にコスパが高い/ただし国民年金基金を選ぶ場合は不可)
  2. 小規模企業共済とiDeCoで所得控除を積む(退職金づくり+節税)
  3. 確定給付の安心が欲しければ国民年金基金を共通枠の中で組み合わせる

いずれも共通するのは、掛金がまるごと所得控除になるという強力な節税効果です。所得税・住民税の実効税率が30%の人なら、年間の掛金の約3割がそのまま税負担の軽減につながります。青色申告の控除や基礎控除と重ねれば、課税所得をさらに圧縮できます。控除の全体像は青色申告65万円控除の記事基礎控除の記事もあわせて確認してください。

注意(受け取り時の税金):iDeCoと小規模企業共済を一時金で受け取るときは、退職所得控除の計算で受取時期・順序によって税負担が変わる場合があります。両方を積み立てている人は、受け取り前に税理士へ相談するのが安全です。


「定年がない」ことは最大の武器

数字だけ見るとフリーランスの年金は不利ですが、視点を変えると強みもあります。会社員のように定年で強制的にリタイアする必要がなく、体が動く限り働き続けられるからです。

70歳まで無理なく稼げる状態を維持できれば、必要な老後資産は大きく圧縮できます。「資産を積む」だけでなく「長く稼げるスキルと健康を保つ」ことも、フリーランスにとっては立派な老後対策です。ただし体力依存の職種では継続就労が難しい場合もあるため、自分の業種特性を踏まえた設計が欠かせません。

年金・社会保険・節税は、フリーランスにとって知っているかどうかで手取りと老後の安心が変わる分野です。こうした基礎知識は、フリーランス検定の無料テストで自分の理解度を確かめられます。制度をまとめて体系的に押さえたい人は、書籍版もあわせてどうぞ。


この記事のポイント

  • フリーランスの公的年金は原則老齢基礎年金のみ(満額でも2026年度で月7万608円・年84万7,300円)。厚生年金がある会社員より薄いのが前提
  • 上乗せの4本柱=iDeCo・国民年金基金・付加年金・小規模企業共済。いずれも掛金が全額所得控除で節税になる
  • iDeCo・国民年金基金・付加保険料は合算で月6万8,000円の共通枠(2027年1月から月7万5,000円へ引き上げ予定)。付加年金と国民年金基金は併用不可
  • 数値・制度は本記事執筆時点(2026年7月)のもの。最新は日本年金機構・国民年金基金連合会・中小機構・国税庁の公式情報をご確認ください

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