青色申告65万円控除の取り方——白色申告との違いと最短手順【2026年】
税務・確定申告
フリーランス・個人事業主の確定申告で最も効果的な節税手段のひとつが、青色申告の特別控除です。
条件を満たせば所得から最大65万円を差し引けるため、実効税率30%の場合、それだけで約19.5万円の節税になります。白色申告にはこのような控除がなく、差は年々積み上がっていきます。
この記事では「65万円控除を受けるために何が必要か」「白色申告と何が違うのか」「どの順番で手続きを進めるか」を、2026年時点の制度情報をもとに解説します。
青色申告と白色申告、何が違うのか
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。どちらでも申告できますが、受けられる税務上のメリットが大きく異なります。
| 項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 事前手続き | 承認申請書の提出が必要 | 不要(誰でも即日適用) |
| 帳簿の方法 | 複式簿記(65万円・55万円控除)または簡易簿記(10万円控除) | 簡易帳簿でよい |
| 特別控除 | 最大65万円(条件による) | なし(0円) |
| 赤字の繰越 | 翌年以降3年間繰り越せる | できない |
| 専従者給与 | 届出すれば家族への給与を全額経費にできる | 配偶者86万円・その他50万円の上限あり |
白色申告は手間が少ないように見えますが、節税の観点では青色申告に大きく劣ります。開業時に手続きを済ませてしまえば、それ以降は青色申告のメリットを毎年受け続けられます。
青色申告特別控除の3段階
青色申告の特別控除は、帳簿の付け方と申告方法によって金額が変わります。
65万円控除(最大・最もお得)
以下の3つすべてを満たす必要があります。
- 複式簿記で帳簿をつける(仕訳帳・総勘定元帳)
- 損益計算書と貸借対照表を添付して、期限内(原則3月15日まで)に申告する
- e-Taxで電子申告するか、電子帳簿保存法が定める「優良な電子帳簿」として保存する
③の要件が加わったのは2020年分(令和2年分)の申告からです。それ以前は複式簿記と期限内申告だけで65万円控除を受けられましたが、現在は電子的な手続きも条件に含まれています。
e-Taxとはインターネットで確定申告書を送信するシステムです。freee・マネーフォワード クラウド・弥生会計などの会計ソフトは、e-Tax連携機能を標準搭載しているため、操作に慣れれば複式簿記の知識が少なくても対応しやすくなっています。
55万円控除
複式簿記で帳簿をつけ、損益計算書と貸借対照表を添付して期限内に申告するが、e-Taxや電子帳簿保存を使わず紙で申告する場合に適用されます。
e-Taxを使うだけで65万円に上がるため、紙申告にこだわる特別な事情がなければ65万円を狙うのが合理的です。
10万円控除
複式簿記ではなく**簡易簿記(単式簿記)**で帳簿をつける場合に適用されます。記帳の手間は少ないですが、控除額は65万円の約15%にとどまります。帳簿管理の簡便さより節税効果を優先するなら、複式簿記+e-Taxを選ぶほうが長期的には有利です。
比較まとめ
| 控除額 | 必要な要件 |
|---|---|
| 65万円 | 複式簿記+期限内申告(損益計算書・貸借対照表添付)+e-Tax電子申告または優良な電子帳簿保存 |
| 55万円 | 複式簿記+期限内申告(損益計算書・貸借対照表添付)。紙申告でもOK |
| 10万円 | 簡易簿記+青色申告承認申請書の提出のみ |
| 0円 | 白色申告(手続き不要) |
65万円控除を受けると実際いくら節税になるか
65万円の控除は所得から直接差し引かれます。所得税と住民税を合わせた実効税率別の節税額は以下の目安です。
| 実効税率(所得税+住民税) | 65万円控除による節税額の目安 |
|---|---|
| 20%(所得税5%+住民税10%+復興税など) | 約13万円 |
| 30%(所得税20%+住民税10%) | 約19.5万円 |
| 40%(所得税30%超の場合) | 約26万円 |
実際の節税額は所得額・各種控除・住民税の計算方法によって異なります。上記はあくまで目安です。
白色申告(控除0円)と比較すると、毎年13〜26万円の差が生じます。10年続ければ130〜260万円の差になります。
青色申告を始めるための手続き
ステップ1:青色申告承認申請書を税務署に提出する
青色申告を適用するには、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を所轄税務署に提出する必要があります。この手続きなしに青色申告は選べません。
提出期限(重要)
| 状況 | 期限 |
|---|---|
| すでに事業を行っている(前年以前から) | 青色申告を適用したい年の 3月15日まで |
| 1月16日以降に開業した場合 | 開業日から2ヶ月以内 |
| 1月1日〜1月15日に開業した場合 | その年の 3月15日まで |
期限を1日でも過ぎると、その年は白色申告が確定します。延長や例外は認められていないため、開業届と同じ日にまとめて提出するのが最も確実です。
e-Taxを使えばオンラインで提出できます。freee・マネーフォワードの「開業届」機能からも一括送信できます。
詳しい書き方と提出手順は「フリーランスの開業届の書き方・e-Taxでの出し方と青色申告承認申請をセットで」を参照してください。
ステップ2:複式簿記で日々の帳簿をつける
65万円控除(または55万円控除)には、複式簿記による帳簿が必要です。
複式簿記は「借方・貸方」の形式で一つの取引を二面から記録する方法です。手書きで行う場合は専門知識が必要ですが、会計ソフトを使えば自動仕訳される項目も多く、慣れれば初心者でも対応できます。
主な会計ソフトの例:
- freee会計 — 銀行口座・クレカ連携で自動取得。青色申告65万円控除に対応
- マネーフォワード クラウド確定申告 — 銀行・証券連携に強い。申告書作成まで一気通貫
- 弥生会計オンライン — 個人事業主向けに機能を絞った軽量版あり
ステップ3:e-Taxで申告する
65万円控除を受けるには、確定申告書と青色申告決算書(損益計算書・貸借対照表)をe-Taxで送信します。
e-Taxの主な方法:
- マイナンバーカード+スマホのNFC読取 — 最も手軽。確定申告書作成コーナー(国税庁)から操作
- ID・パスワード方式 — マイナンバーカードなしでも利用可能。ただし2025年10月以降は新規発行が停止されており、既存利用者のみ継続利用可(とされています)
- 会計ソフト経由 — freee・マネーフォワードからそのままe-Tax送信できる
申告書の送信後に「受信通知」が発行されます。これが「電子申告した証明」になるため保存しておきましょう。
よくある落とし穴
期限後申告は65万円控除を失う
青色申告特別控除(65万円・55万円)は、申告期限内(原則3月15日)に提出した場合のみ適用されます。
期限を過ぎると自動的に10万円控除に格下げされます(白色申告になるわけではなく、青色申告の中での控除額が下がります)。「忙しくて間に合わなかった」という理由でも例外はありません。確定申告の期限はカレンダーに必ず登録してください。
帳簿の保存期間は7年(一部5年)
青色申告では帳簿・書類の保存が法律上の義務です。
| 書類 | 保存期間 |
|---|---|
| 総勘定元帳・仕訳帳などの帳簿 | 7年間 |
| 決算関係書類(損益計算書・貸借対照表など) | 7年間 |
| 領収書・請求書などの証憑書類 | 7年間(前々年の所得が300万円以下の場合は5年) |
電子データで受け取った請求書・領収書は、電子帳簿保存法の要件に従った保存が必要です。
帳簿をつけていない月があると複式簿記要件を満たせない
65万円・55万円控除は「その年の全期間にわたって複式簿記で帳簿をつけていること」が前提です。途中から会計ソフトを導入した場合でも、年の途中からしか入力されていなければ控除が認められないリスクがあります。年の最初から(または開業月から)入力を始めることが重要です。
2027年分から変わる見通し——75万円控除が新設予定
令和8年度(2026年)の税制改正大綱では、2027年分(令和9年分)の確定申告から青色申告特別控除の体系が変わる方針が示されています(執筆時点では法案審議中のため、詳細・最終内容は国税庁の公式発表をご確認ください)。
2027年分以降の控除体系(大綱ベースの見込み)
| 控除額 | 要件(見込み) |
|---|---|
| 75万円(新設) | 複式簿記+e-Tax電子申告+優良な電子帳簿保存 |
| 65万円 | 複式簿記+e-Tax電子申告(電子帳簿保存なし) |
| 10万円 | 簡易簿記または紙申告 |
現在e-Tax申告で65万円控除を受けている人は、2026年中に「優良な電子帳簿保存」の要件を整えておくと、2027年分から75万円控除を受けられる見込みとされています。「優良な電子帳簿」とは、主要な会計ソフトが対応済みの保存形式で、訂正・削除の履歴が残るかたちで電子データを保存するものを指します。
詳細は国税庁の公式情報が出次第、確認してください。
赤字が出た年の青色申告の使い方
青色申告のもう一つの重要なメリットが純損失の繰越控除です。
事業で赤字が出た年は、その損失を翌年以降最長3年間繰り越せます。たとえば開業初年度に100万円の赤字が出た場合、翌年に黒字が出たとき、過去の赤字分を差し引いて税金を計算できます。
独立初期の設備投資や費用先行の時期に特に有効です。白色申告では赤字の繰越ができないため、開業と同時に青色申告を選ぶほうが長い目で見ると有利です。
確定申告の流れとの関係
青色申告の手続きは、年間を通じた確定申告の流れの中に位置づけられます。
全体の申告ステップは「フリーランス・副業の確定申告、初めてでも迷わないやり方を全ステップで解説」で詳しく説明しています。また、何が経費になるかを整理したい場合は「フリーランスの経費、何が認められる?OK・NG・グレー一覧と家賃・スマホ・食事の按分チェックリスト」も参考にしてください。
フリーランスの税務知識を体系的に確認したい方には、フリーランス検定(ベーシック・無料・30問)をご活用ください。青色申告・白色申告・確定申告の基礎が出題範囲に含まれています。
まとめ:青色申告65万円控除を受けるための3ポイント
青色申告承認申請書は期限内に提出する: 開業年は「開業日から2ヶ月以内」が原則。期限を過ぎるとその年は白色申告が確定し、65万円控除は翌年以降にしか受けられない
複式簿記+e-Taxがセットで65万円控除の条件: 紙申告のみなら55万円にとどまる。会計ソフト(freee・マネーフォワード等)を使えばe-Tax連携まで一括で対応しやすい
2027年分から75万円控除が新設される見込み: 「優良な電子帳簿保存」を追加することが条件(大綱ベース・詳細は公式確認)。現在e-Tax申告中の方は2026年中の対応を検討する価値がある
電子書籍『フリーランスの教科書』(全110章)では、青色申告・白色申告の違いから確定申告の実務手順・節税策まで体系的に解説しています。開業時の税務手続き全般を確認したい方にご活用ください。
参考リンク
- 国税庁・青色申告特別控除の適用要件(No.2072): https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
- 国税庁・青色申告承認申請手続: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
- 国税庁・65万円控除・電子帳簿保存に係る届出手続: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09_2.htm
- 国税庁・確定申告書等作成コーナー: https://www.keisan.nta.go.jp/
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