少額減価償却資産が40万円未満に拡大——PC・機材を一括経費にできる枠が広がる【2026年】
経費・節税
フリーランスが仕事用にパソコンやカメラ、機材を買ったとき、金額によっては「その年に全額を経費にできず、数年に分けて少しずつ経費にする(減価償却)」ことになります。この扱いを大きく左右するのが少額減価償却資産の特例です。
令和8年度税制改正で、この特例の上限が30万円未満から40万円未満に拡大されました(2026年4月1日以後に取得したものから)。10万円以上の高額機材を一括で経費にできる枠が広がったことになります。この記事では、フリーランス・個人事業主の視点で、仕組みと適用時期、注意点を整理します。
注意: 本記事は2026年7月時点で確認できた公式情報(令和8年度税制改正・中小企業庁・経済産業省資料)にもとづいています。上限額・対象要件・適用期限は今後の運用で変わる可能性があるため、実際の購入・計上の前に中小企業庁や国税庁の公式情報でご確認ください。
少額減価償却資産の特例とは
10万円以上の備品は本来「減価償却」する
事業で使う備品のうち、取得価額が10万円以上のものは、原則として買った年に全額を経費にはできません。法定耐用年数にわたって少しずつ経費に振り分ける「減価償却」という処理をします。たとえば20万円のパソコンなら、数年に分けて経費計上するのが原則です。
特例を使えば「その年に全額」を経費にできる
これに対し、少額減価償却資産の特例を使うと、一定額未満の資産を、事業に使い始めた年に全額まとめて必要経費にできます(即時償却)。減価償却の手間がなく、その年の利益を圧縮できるため、フリーランスの節税・資金繰りの調整に使われてきた制度です。
なお、取得価額が10万円未満のものは、この特例を持ち出すまでもなく通常の消耗品費などで全額経費にできます。特例が主に効くのは「10万円以上・上限未満」の中間ゾーンの備品です。経費の全体像は「フリーランスの経費、何が認められる?判定の考え方と具体例」も参考にしてください。
2026年の改正——上限が30万円未満から40万円未満へ
40万円未満に拡大(2026年4月1日以後の取得分から)
令和8年度税制改正により、即時償却できる取得価額の上限が30万円未満から40万円未満に引き上げられました。適用されるのは2026年4月1日以後に取得したものからです。
取得時期で基準が分かれる点に注意
ここが実務で間違えやすいポイントです。
- 2026年3月31日以前に取得: 従来どおり 30万円未満 が基準
- 2026年4月1日以後に取得: 40万円未満 が基準
つまり、同じ35万円のパソコンでも、取得(購入して引き渡しを受け、事業に使い始める)タイミングが2026年4月1日をまたぐかどうかで、一括計上できるかが変わります。年度をまたぐ高額機材の購入は、取得日を意識すると判断がぶれません。
年間の合計には上限(300万円)がある
この特例には、1事業年度あたりの合計額に上限があり、合計300万円までとされています。40万円未満の資産を何個も買えば無制限に一括計上できるわけではない、という点は従来と同じです。
対象は青色申告の個人事業主・中小企業者
特例を使えるのは、青色申告書を提出している個人事業主・中小企業者です。白色申告では利用できません。また、対象事業者の要件として、常時使用する従業員数の基準(改正で500人以下から400人以下に引き下げられたとされています)があります。ほとんどの個人フリーランスは人数要件には収まりますが、青色申告であることが前提になる点は必ず押さえてください。青色申告の始め方は「開業届と青色申告承認申請書をe-Taxで出す手順」で解説しています。
適用期限も延長される見込み
この特例には適用期限が設けられていますが、令和8年度税制改正により、期限が3年延長され2029年(令和11年)3月31日までとなる見込みとされています。当面は利用できる制度と考えてよいでしょう。ただし期限や上限は将来変わり得るため、最新情報の確認は続けてください。
フリーランスが使うときの実務ポイント
「取得=事業に使い始めた」タイミングで判定する
即時償却は、資産を取得して**事業の用に供した(実際に使い始めた)**年に計上します。注文しただけ・支払っただけでは足りず、手元に届いて業務で使い始めていることが前提です。年末ぎりぎりに購入する場合は、その年のうちに使用を開始しているかを確認しましょう。
「一括で落とす」が常に得とは限らない
利益が大きい年に高額機材を一括計上すれば、その年の節税効果は大きくなります。一方で、利益が少ない年や赤字の年は、無理に一括計上せず通常の減価償却で数年に分けたほうが、各年の控除をバランスよく使えることもあります。目先の一括計上にこだわらず、その年の所得見込みと合わせて選ぶのが実務的です。
償却資産税(固定資産税)の対象になる場合がある
少額減価償却資産の特例で一括経費にした資産でも、一定額以上のものは市区町村の**償却資産税(固定資産税の一種)**の申告対象になる場合があります。所得税・住民税が軽くなる一方で、別の税がかかることがある点は覚えておくと安心です。詳細は資産の所在地の市区町村で確認してください。
購入前に確認したい3つのこと
確認1:取得日が2026年4月1日以後かどうか
40万円未満の基準が使えるのは2026年4月1日以後の取得分です。3月末までに取得したものは30万円未満が基準になります。年度をまたぐ高額機材は、いつ使い始めるかを意識しましょう。
確認2:自分が青色申告か・年間300万円の枠に収まるか
特例は青色申告が前提で、年間合計300万円までという上限があります。すでに他の機材で枠を使っている場合は、残りの枠を確認してください。
確認3:一括計上と減価償却のどちらが有利か
その年の所得見込みによっては、一括で落とさず通常の減価償却を選んだほうがよいこともあります。迷う場合は会計ソフトの試算や税理士への相談で、複数年のバランスを見て判断しましょう。確定申告の全体の流れは「フリーランスの確定申告、初めてでも迷わないやり方」を参考にしてください。
まとめ:少額減価償却資産40万円で押さえる3つのポイント
上限が30万円未満→40万円未満に拡大: 令和8年度税制改正で即時償却の取得価額上限が引き上げられ、10万円以上40万円未満の機材をその年に全額経費にできる枠が広がりました。適用は2026年4月1日以後の取得分から
取得日と要件に注意: 2026年3月31日以前の取得は従来どおり30万円未満が基準。特例は青色申告が前提で、年間合計300万円まで。適用期限は2029年3月末まで延長される見込みです
一括が常に得とは限らない: 利益の大きい年は一括計上の節税効果が大きい一方、赤字・低利益の年は通常の減価償却が有利なことも。所得見込みと合わせて選び、償却資産税の対象になる場合がある点も押さえておく
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参考リンク
- 中小企業庁・少額減価償却資産の特例: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/tokurei/syougaku_shisan.html
- 経済産業省・少額減価償却資産の特例を拡充しました(PDF): https://www.meti.go.jp/main/zeisei/pdf/sonota_syogakutokurei.pdf
- 財務省・令和8年度税制改正の大綱: https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_03.htm
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