フリーランスの車は経費にできる?——按分割合の決め方と、個人事業主に「4年落ち中古車で全額経費」が効かない理由【2026年版】

経費・節税

「車を買えば節税になる」——フリーランスになると、どこかで一度は聞く話です。

ただ、この話の多くは法人を前提にした説明で、個人事業主にそのまま当てはまるとは限りません。とくに有名な「4年落ちの中古車を買えば初年度に全額経費にできる」という定番のテクニックは、個人事業主の申告ではまず期待どおりに効きません。

この記事では、車を経費にするときの2つの関門——減価償却と家事按分——を順に整理し、どこまでが確立したルールで、どこからが個別判断なのかを分けて解説します。


車を経費にするには2つの関門がある

事業で使う車の費用は、次の2段階を通って必要経費になります。

  1. 減価償却:車両本体は買った年に全額を経費にできない。耐用年数にわたって分割する
  2. 家事按分:プライベートでも使う車は、事業に使っている割合の分だけが経費になる

つまり「300万円の車を買ったから300万円の経費」にはなりません。年ごとの償却費を計算し、そこからさらに事業使用割合を掛ける——という二段構えになります。この構造を理解しておくと、ネット上の「車で節税」の話がどこまで自分に当てはまるかを判断できます。


関門①:減価償却——耐用年数で分割する

新車の耐用年数

10万円以上の資産は、購入した年に全額を経費にせず、法定耐用年数にわたって分割して経費化します。車の法定耐用年数(事業用・一般用)は次のとおりです。

車種 法定耐用年数
普通自動車 6年
軽自動車 4年
バイク 3年

たとえば360万円の新車(普通車・耐用年数6年)を全額事業用として買った場合、定額法なら年60万円ずつ、6年かけて経費にしていきます。年の途中で購入した場合は、購入した月から月割りで計算します。

中古車の耐用年数は短くなる

中古車を買った場合は、簡便法により耐用年数を短く見積もることができます。

法定耐用年数の一部を経過している場合:
耐用年数 = 法定耐用年数 − 経過年数 +(経過年数 × 20%)

法定耐用年数を全部経過している場合:
耐用年数 = 法定耐用年数 × 20%

※計算結果に1年未満の端数があるときは切り捨て、2年未満になるときは2年

これを普通車(法定耐用年数6年)に当てはめると次のようになります。

中古車の状態 計算 耐用年数
3年落ち 6 − 3 + 3×0.2 = 3.6年 3年
4年落ち 6 − 4 + 4×0.2 = 2.8年 2年
8年落ち(全部経過) 6 × 0.2 = 1.2年 2年

年式が古いほど耐用年数は短くなり、早く経費化できます。ただし下限は2年なので、どれだけ古い車を買っても「1年で全額経費」にはなりません。


「4年落ち中古車で全額経費」が個人事業主に効かない理由

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

有名な「4年落ちの中古車を買えば初年度にほぼ全額を経費にできる」という話は、定率法という償却方法を前提にしています。定率法では初年度の償却率が高く、耐用年数2年なら理論上その年に取得価額の大部分を償却できるためです。

ところが、個人事業主の法定償却方法は定額法です。建物などを除く一般的な減価償却資産(車両運搬具を含む)について、法人は定率法、個人事業主は定額法が原則という違いがあります。定額法で耐用年数2年なら、償却は年およそ50%ずつ、2年に分かれます。初年度に全額とはいきません。

個人事業主が定率法を使いたい場合は、所轄の税務署に償却方法の届出書を提出する必要があります。開業した年であればその年分の確定申告期限まで、それ以降に変更する場合は変更しようとする年の3月15日までが提出期限です。

判断は自分の数字で 定率法に変更すれば早期に多く償却できますが、償却できる総額が増えるわけではなく、後年の償却費が減るだけです。「今年の所得を圧縮したい」のか「毎年一定額を落としたい」のかで有利・不利が変わります。届出は一度出すと簡単には戻せないため、税理士に相談してから判断してください。

そもそも「経費になる」=「得をする」ではない

車の購入は支出そのものです。300万円を払って所得が300万円減っても、手元のお金は減っています。事業に本当に必要な車かどうかが先で、節税効果は結果にすぎません。事業で使わない車を「節税のため」に買うのは順序が逆です。

なお、事業用として減価償却した車を売却したときは、売却益が譲渡所得として課税されます。購入時の資料がないと取得費を売却価格の5%として計算せざるを得なくなるため、購入時の契約書・ローン明細は手放すまで保管してください。


関門②:家事按分——事業で使う割合だけが経費

プライベートでも乗る車は、費用の全額を経費にできません。事業に使っている部分を明らかに区分できる場合に、その部分だけを必要経費にします。

按分の基準は「走行距離」がもっとも説明しやすい

車の按分でよく使われるのは次の2つです。

  • 走行距離ベース:業務走行距離 ÷ 総走行距離。もっとも実態に近く、説明しやすい
  • 使用日数ベース:業務で使った日数 ÷ 総使用日数。簡便的な方法

たとえば年間の総走行距離が12,000km、そのうち打ち合わせ・納品・仕入れなど業務での走行が7,200kmなら、事業使用割合は60%です。前述の360万円の新車(年間償却費60万円)なら、その年の経費は 60万円 × 60% = 36万円 になります。

税法に「車は何割まで」という決まった数字はありません。問われるのは割合の大小ではなく、その割合をどう計算したかを説明できるかです。運行記録、カーナビやスマートフォンの走行履歴、業務日報、訪問先のスケジュールなどを残しておきましょう。按分の考え方そのものは家賃や電気代と共通なので、家事按分の割合はどう決める?もあわせて確認してください。

按分の対象になる車の費用

按分するのは車両本体(減価償却費)だけではありません。

費目 扱い
減価償却費 事業使用割合を掛けて経費
ガソリン代 同上
自動車税(種別割) 同上
自動車保険(任意・自賠責) 同上
車検・修理・整備費用 同上
駐車場代(月極) 同上。業務中のコインパーキング代は全額経費にできる
高速道路料金・ETC 業務利用分は全額経費(私用分は経費にしない)
自動車ローンの元本 経費にならない(借入金の返済のため)
自動車ローンの利息 事業使用割合を掛けて経費

ローンの元本が経費にならないのは、住宅ローンと同じ考え方です。返済は借入金という負債の減少であって、費用の発生ではありません。経費になるのは利息部分だけです。

税務署からは「見えている」 減価償却の明細を申告書に付ける以上、どんな資産をいくらで持っているかは税務署に伝わります。所得の規模に見合わない高額車や、実態と離れた按分割合は説明を求められやすい部分です。実態に合った割合で、根拠を残して申告しましょう。


リース・カーシェアという選択肢

購入以外の方法なら、減価償却の計算そのものが不要になります。

  • リース:毎月のリース料を、事業使用割合に応じて経費にします。減価償却の管理は不要です
  • カーシェア・レンタカー:業務で使ったつど、その利用料を経費にします。利用履歴が残るため、業務利用であることを示しやすいのも利点です

車の利用頻度が高くないなら、購入して6年かけて償却するより、使ったときだけ費用にするほうが管理も資金繰りもシンプルです。「所有する必要が本当にあるか」から考えるのが、結局いちばん効く節約になります。


まとめ:車の経費で押さえる3点

  1. **車両本体は買った年に全額経費にできない。**普通車6年・軽自動車4年の耐用年数で分割する。中古車は簡便法で耐用年数を短くできるが、下限は2年
  2. **「4年落ちで全額経費」は法人(定率法)の話。**個人事業主の法定償却方法は定額法で、定率法を使うには税務署への届出が必要
  3. **プライベート兼用なら事業使用割合の分だけ。**走行距離ベースがもっとも説明しやすく、記録を残すことが割合そのものより重要

経費の判断は、車に限らず「事業に必要か」「説明できるか」の2点に集約されます。経費全体の考え方はフリーランスの経費、何が認められる?で、40万円未満の資産を一括で経費にできる特例は少額減価償却資産の特例で詳しく解説しています。

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本記事は2026年8月時点の一般的な解説です。耐用年数・特例の要件・償却方法の届出は改正されることがあり、個別の事情によって判断も変わります。実際の申告にあたっては国税庁の公表情報を確認するか、税理士にご相談ください。

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