フリーランスの年収は平均いくら?——「約300万円」の中身と、平均に埋もれない読み方

働き方・開業

「フリーランスの平均年収は約300万円」——検索するとよく出てくる数字です。

ただ、この数字をそのまま「自分が独立したら300万円くらい」と読むと、判断を誤ります。フリーランスの年収は、会社員の給与分布と比べてばらつきが極端に大きい。平均値の近くに人が集まっていないタイプの分布だからです。

この記事では、公的調査と民間調査の実数を並べたうえで、「平均年収」という数字をどう扱えば自分の判断材料になるのかを整理します。


フリーランスの平均年収は約300万円(内閣官房2020年調査)

もっとも広く引用されるのが、内閣官房日本経済再生総合事務局が2020年5月に公表した「フリーランス実態調査結果」です。全国のフリーランス7,478人から回答を得た調査で、日本のフリーランス人口を462万人(本業214万人・副業248万人)と推計しました。

この調査における本業フリーランスの年収は、次の水準です。

指標 金額
平均値 約300万円
中央値 約200〜300万円

平均値と中央値がほぼ重なっているのは、後述するとおり低年収層と高年収層が両側に広がっているためです。

なお、この調査は2020年公表のもので、調査時点は2020年2〜3月です。フリーランス人口も働き方も動いているため、「最新の実額」ではなく「構造を読むための基準値」として扱うのが安全です。


実態は「平均の周りに集まっていない」——年収分布を見る

平均年収より重要なのが分布です。同じ内閣官房2020年調査の本業フリーランスの年収帯を見ると、こうなります。

年収帯 割合
100万円未満 約18%
100〜200万円 約22%
200〜300万円 約15%
300〜500万円 約18%
500〜1,000万円 約20%
1,000万円超 約7%

読み取れるのは2点です。

① 年収200万円未満が約40% 100万円未満(約18%)と100〜200万円(約22%)を合わせると、本業フリーランスの約4割が年収200万円未満。開業初期はここから始まる人が多数派です。

② それでも500万円以上が約27% 500〜1,000万円が約20%、1,000万円超が約7%。「フリーランスは稼げない」で片付くほど単純な分布ではありません。

つまり、フリーランスの年収分布は下に厚く、しかし上にも伸びている。平均値の300万円という数字は、この両側を機械的にならしただけの値で、「典型的なフリーランス像」を指しているわけではないのです。


フリーランス白書2025のデータ——民間調査で見る近年の傾向

より新しいデータとしては、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が2025年3月31日に発表した「フリーランス白書2025」があります。

同白書の年収分布は次のとおりです。

年収帯 割合
200万円未満 21.6%
200〜400万円未満 40.9%(最多)
400〜600万円未満 22.4%
1,000万円以上 8.6%

また同白書では、稼働時間との相関にも触れられています。フリーランスの稼働時間は会社員より個人差が大きく、年収は稼働時間に比例する傾向があること、いわゆるフルタイム(月間140時間以上)で働く人と年収400万円以上の人はそれぞれ約半数程度、という結果が示されています。

案件の獲得経路についても、報酬が高い層ほど「人脈」「過去・現在の取引先」からの受注が多く、次いでエージェントサービスという傾向が報告されています。

この2つの調査を並べるときの注意

内閣官房調査と白書の数字は、そのまま比較できません

  • 母集団が違う:内閣官房調査は全国のフリーランスを対象とした公的調査。白書はフリーランス協会の会員・関係者を中心とした調査で、IT・クリエイティブ職や意識の高い層が回答しやすい構造があります。
  • 年収帯の区切りが違う:内閣官房は「200〜300万円」、白書は「200〜400万円未満」といった刻みで、境界がそろっていません。
  • 調査時点が違う:2020年と2025年では市場環境が異なります。

「白書のほうが新しいから正しい」でも「公的調査だから絶対」でもなく、性格の違う2つのスナップショットとして読むのが妥当です。それでも両者に共通しているのは、①年収200万円前後に厚い層がある、②1,000万円超は1割弱いる、という構造です。


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年収は「職種」でも大きく変わる

平均年収がぼやける最大の理由は、フリーランスという括りに単価水準の違う職種が同居していることです。おおよその月額相場を並べると、差は明確です。

職種 月額相場の目安
データサイエンティスト・AI関連 80万〜150万円
コンサルタント・戦略立案 80万〜150万円
ITエンジニア 60万〜100万円
デザイナー(グラフィック・UI/UX) 30万〜60万円
動画編集・制作 20万〜60万円
ライター・編集 15万〜50万円

※相場は案件・経験年数・地域・スキル階層によって大きく変動します。実際の水準は、エージェントの公開案件やクラウドソーシングの実案件で、その時点の募集価格を確認してください。

同じ職種の中でも幅は大きく、たとえばITエンジニアなら経験2年以下の初級で月40〜50万円、8年以上でマネジメント経験ありの上級なら月80〜150万円と、倍以上の開きがあります。


「平均年収」を自分の判断に使うときの3つの注意点

① 平均値ではなく「自分がどの帯にいるか」で考える

年収分布が下にも上にも広い以上、平均300万円という数字から自分の将来収入を推定することにはほとんど意味がありません。見るべきは「自分の職種・経験・稼働時間なら、どの年収帯が現実的か」です。

② 額面と手取りは違う

フリーランスの年収は基本的に売上ベースや所得ベースで語られることが多く、会社員の額面給与と同じ感覚で比較できません。ここから経費を引き、所得税・住民税・国民健康保険料・国民年金保険料を自分で負担します。会社員時代は労使折半だった社会保険料も、フリーランスは全額自己負担です。この構造はフリーランスの社会保険——会社員と何が変わる?で整理しています。

「年収400万円のフリーランス」と「額面400万円の会社員」は、手元に残る金額が同じにはなりません。

③ 統計は過去のスナップショット

内閣官房調査は2020年、白書2025でも調査時点は直近とはいえ過去です。特に生成AIの普及以降、ライティングの低単価案件やデータ入力のような領域は影響を受けやすく、逆にAIツールの運用・監修や、顧客との信頼構築を伴う領域は需要が高まる傾向が指摘されています。数字は半年〜1年ごとに見直すのが実務的です。


収入の「平均」より、収入の「安定」が効く

内閣官房調査では、フリーランスの課題として収入の不安定さが最も多く挙げられています。年収の絶対額だけでなく、その収入がどれだけ続くかが生活を左右するということです。

実務的な対策としては、次のような形が挙げられます。

  1. 顧客を分散する — 1顧客への売上依存度を4割以下に抑える目安を持つ
  2. 月額継続案件の比率を上げる — 案件型だけだと収入が月ごとに振れる
  3. 緊急資金を確保する — 生活費の3〜6か月分が一つの目安

年収1,000万円超の層に共通する条件としても、高単価案件の獲得、複数案件の並行、そして既存顧客との長期契約——つまり新規営業に依存しない基盤づくりが挙げられます。案件獲得の考え方はフリーランスの仕事の取り方にまとめています。

なお、副業としてフリーランス活動をしている場合は、収入がいくらから確定申告の対象になるかという別の論点があります。こちらは副業の確定申告、いくらから必要?を参照してください。


まとめ

ポイント 内容
平均年収 約300万円(内閣官房2020年調査・本業フリーランス)
中央値 約200〜300万円(同上)
年収200万円未満 約40%(同上)
年収1,000万円超 約7%(同上)/8.6%(フリーランス白書2025)
最多年収帯 200〜400万円未満 40.9%(フリーランス白書2025)

「フリーランスの平均年収は約300万円」は事実ですが、その平均の周りに人が集まっていないというのが、この数字の本当の中身です。年収200万円未満が約4割いる一方で、500万円以上も約3割弱いる。同じ職種でも、単価水準・契約形態・顧客層によって結果は大きく変わります。

平均値を見て安心したり落胆したりするより、自分の職種の相場を実案件で確認し、収入の安定性を設計するほうが、はるかに再現性のある行動です。

こうした「数字の読み方」を含め、フリーランスとして必要な税務・契約・社会保険の知識は、書籍『フリーランスの教科書』(全110章)で体系的に整理しています → https://freelance-kentei.jp/?l=7


参考リンク

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